きれいな自然があるから釣りができる!
いつも釣場をきれいにして頂きありがとうございます。

増えすぎた鹿と、ある漁師の言葉
「ここ、昔はアワビがゴロゴロ採れたんだよ。」
伊豆の海沿いで、漁師歴50年の男性は、静かにそう話してくれた。
今では、海の中にびっしりとあったはずの海藻は姿を消し、岩はむき出し。アワビやウニもほとんど見かけなくなった。
原因は、海ではなく「山にいる鹿かもしれない」と言われたとき、最初は信じられなかった。
でも調べていくうちに、それはただの比喩ではなく、本当に「山の異変が海を壊している」という現実を知ることになった。
鹿が森を壊す
日本では近年、野生の鹿が急激に増えている。
天敵だったオオカミの絶滅、温暖な気候、そして狩猟者の減少など、いくつもの要因が重なり、かつて想定されていた生態系のバランスが崩れてしまった。
草食動物である鹿は、森の下草や若木、低木の葉をどんどん食べてしまう。
少しなら問題ない。でも、増えすぎると、森林の再生そのものが止まってしまう。
森の中の落ち葉が積もり、腐葉土になり、微生物がそれを分解して…という、あの「豊かな土の循環」。それが止まると、土は痩せ、栄養は減り、緑の層が消えていく。
川は、森の命を運んでいた
健康な森には「フルボ酸鉄」という成分が豊富に含まれている。
これは落ち葉などが分解される過程で生まれる栄養分で、雨で川へと流れ、やがて海へと届いていた。
このフルボ酸鉄は、海藻の生育を助け、結果としてアワビやウニ、メバルやイカといった海の生き物たちの基盤となっていた。
けれど、森が痩せれば、そのフルボ酸鉄は生まれない。
代わりに、流れていくのは「泥」や「土」。本来なら命を運ぶはずの川が、海を濁らせ、酸素を奪い、静かに海を死なせていく。
海藻が消える「磯焼け」
その結果として現れるのが「磯焼け」だ。
昆布やワカメ、ホンダワラなどの海藻が根付かず、岩肌がむき出しになる現象。
そこにはウニやアワビもいなくなり、海のゆりかごだった浅瀬が、生命の気配を失っていく。
僕自身、この変化をもう10年近く前から肌で感じていた。
「このままではヤバイ」釣り人としての直感
メバルが釣れない。イカの群れも見えない。春なのに潮の香りがしない。釣り人として、肌で感じる違和感が年々強くなっている。
僕はルアーブランド「シカベイト」を通じて、自然の中で釣りを楽しむことを大切にしてきた。だからこそ、森と海のつながり、鹿と海藻の関係を無視できなかった。
「山のことは山の人がやってくれる」では、きっと間に合わない。
釣り人こそ、自然の変化を一番最初に感じ取る存在なのかもしれない。
魚は釣れなくなった。ネンブツダイですら見なくなった。
夏に潜っても、子どもの頃に見ていた、あの海藻だらけの景色はどこにもない。
水中で揺れていた緑の森は、ただの岩と砂に変わってしまった。
春になると、あれほど感じていた潮の香りもなくなった。
海が生きているという実感が、年々失われていく。
正直、悲しかった。やりきれない思いだった。
でも、そうやって悩んでいるうちに、僕は気づいた。
この変化は、「山」から始まっていたのかもしれない、と。
シカベイトとしてできること
僕たち『シカベイト』は、鹿革を使ったルアーを作っている。
最初は「自然素材の強さ」に惹かれて始めた。でも今は、単に素材の話では済まされないと感じている。
鹿が増えた理由。
森が壊れ、海が死んでいく過程。
そして、自分が釣りを通して見てきた自然の変化。
ルアーを通じて、そういった話も伝えていきたいと思うようになった。
僕らが遊んでいるフィールドは、地続きでつながっている。
森、川、海――そして釣り人。
釣り人にできること
僕たちは漁師でもなければ、猟師でもない。
でも、「自然の変化にいち早く気づく」立場にはいると思う。
「昔と比べて、魚が減った」「水が濁りやすくなった」「海藻が減った」
そんな違和感に気づけるのは、フィールドに出ている釣り人だからこそ。
だから、学びたい。知りたい。そして伝えたい。
今、海で起きていることを。
その背後にある、見えない山の出来事を。
最後に
「鹿が増えると海が悪くなる」なんて、信じられないような話に聞こえるかもしれない。
でも、それは現実に起きている。
そして、気づいた僕たちには、きっと何かができる。
フィールドに感謝し、自然に向き合いながら、釣りを続けていく。
それが『シカベイト』のスタンスであり、願いです。
今回はドキュメンタリーぽくするために私やtOvOではなく「僕」と言わせていただきました(^▽^)/
きれいな自然があるから釣りができる!
いつも釣場をきれいにして頂きありがとうございます。
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